エゾウコギ

厳寒の地に生息する有用植物

エゾウコギは学名Acanthopanax Senticosus. HARMSといい、ウコギ科に属する落葉低木です。日本では北海道に自生していたことからエゾウコギと呼ばれており、現在ではおもに帯広・北見・網走などの北海道東部に自生しています。日本以外では、シベリア、中国北部、朝鮮半島などの冷涼な気候の地域に自生しています。

古くから薬用植物として用いられ、注目されてきたエゾウコギ

エゾウコギの根や茎皮は、中国で古くから漢方薬として用いられてきた歴史があり、「刺五加(しごか)」と呼ばれています。約二千年前の中国最古の薬典である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には「主として、心腹、すなわち、胸や腹の部位の病や、その部位などに冷えの気が集まり、血がとどこおって痛みを生じる疝気の病や、腹痛をなおすことができる。」だけでなく、飲み続けても毒性が無い上薬として載録されています。

また、ロシアではエゾウコギは命の根を意味する「エレウテロコック」と呼ばれ、1950年代から旧ソ連科学アカデミーによる研究が行われてきました。1960年には旧ソ連のブレスマン博士によりエゾウコギに薬効があることが発表され、世界で注目を集めました。

補 足アスリートにも愛用されるエゾウコギ

1980年のモスクワオリンピックでエゾウコギを飲用して素晴らしい成績を出した旧ソ連の選手たちが話題になりました。 同年、イギリスの老人医学の権威、ステファン・フルダー博士が、科学雑誌「ニューサイエンティスト」にスポーツ選手へのエゾウコギの投与効果に関する論文を発表したことで一気に関心が高まりました。また、日本国内でも長野オリンピックでスキージャンプの選手が体調管理に利用したり、過酷な訓練を必要とする宇宙飛行士にも愛用されるようになりました。現在でも、競技を問わず多くのスポーツ選手に愛用されていることが知られています。

エゾウコギの薬効成分

エゾウコギには多くの成分が含まれており、その中でもエレウテロサイドE、エレウテロサイドB、イソフラキシジン、エレウテロサイドB1とクロロゲン酸が活性を持つ主要成分とされています。これらの成分はおもに根や茎に含まれますが、エゾウコギの葉には、フラボノイド系のヒぺリン、ケルセチン、ルチンが含まれます。

エゾウコギは薬用人参と同じウコギ科に属しており、リグナン系化合物のエレウテロサイドE(シリンガレジノール・ジグルコシド)の含有量が多い特徴を持っています。

エゾウコギの作用について

エゾウコギは、薬用人参と同様にアダプトゲン(adaptogen)として一般的に広く知られており、活性成分のエレウテロサイドB、E、イソフラキシジン、クロロゲン酸には、抗炎症作用、抗腫瘍作用、抗疲労作用等が報告されています。先行研究でも、エゾウコギ食品の飲用による抗ストレス作用や睡眠改善作用が報告されています。