古来より利用されてきた薬用植物

クワ(Morus alba L.)は、クワ科の落葉高木で、古来よりカイコの餌として利用され、養蚕のはじまりは、中国では約5,000年前、日本には弥生時代に伝わったとされ、その頃から栽培されていました。


また、約2,000年前の中国最古の本草書「神農本草経」には桑の根皮「桑根白皮(そうこんはくひ)」が中品として収載され、鎮咳、去痰等に用いられてきました。

見直される桑葉の健康効果

桑は根以外の部位も利用され、桑葉は、桑茶として用いられ、咳止め、利尿作用、高血圧等に効果があるとされます。また、桑の果実は、桑の実、マルベリーとも呼ばれ、地方によっては果実酒の原料とされます。近年、養蚕業の衰退により桑の栽培も減少していますが、最近の研究から、桑葉に含まれるアザ糖類に食後血糖値の上昇抑制作用が発見され、その機能性が注目されています。

桑の機能性成分

桑葉には、食物繊維、カルシウム、ビタミンE、そして、クロロゲン酸等のポリフェノールが豊富に含まれています。さらに、桑葉には特徴的な機能性成分として、α-グルコシダーゼの活性を阻害するアザ糖類(イミノシュガー)である1-デオキシノジリマイシン、ガラクトピラノシル-1-デオキシノジリマイシン、フォゴミンが含まれています。1-デオキシノジリマイシンは、グルコースと構造が似ているため、小腸で糖類の吸収のために働く酵素であるα-グルコシダーゼ(二糖類を単糖類に分解する酵素)に結合し、その活性を抑える働きをします。その結果、二糖類の単糖類への分解が抑制され、グルコース等の吸収が抑えられ血糖値の上昇が抑制されることになります。

桑葉の機能性について

血糖値上昇抑制、抗酸化作用、アンチエイジング作用、抗動脈硬化作用、免疫賦活作用等、また、葉粉末の摂取により便通改善効果が報告されています。

参考文献

  1. 近藤ひかり、松井義樹, 桑の魅力と可能性、季刊香料2012, No.256: 57-64.
  2. 小島芳弘, 桑葉粉末のヒトにおける食後血糖値抑制作用および便通改善作用
    月刊メディカル・サイエンス・ダイジェスト2016, vol.42, No.1: 33-36.